親愛なる お母さんへ
長いこと家を留守にし、連絡もせずに申し訳ありませんでした。
自分で何一つ出来ないマルコの一人旅を、お母さんはさぞ心配されていたことでしょう。僕は今アリラン峠を後にし、お家へ帰ろうと港までやってきました。しかしあいにくの大雨でなかなか船が出ず港で足止めをくらっている所です。
およそ一ヶ月前、「Under the Sun」という名の、みんなが幸せに過ごしているパラダイスがあると耳にし、自分の眼でそれを確かめたくて、書置き一枚残して、突然家を飛び出して来てしまいました。「Under the Sun」というパラダイスは結局見つけられませんでしたが、行く先々で出会った人々や体験から、自分が今まで、いかに狭い視野とステレオタイプな価値観しか持っていなかったかということを実感させられました。
お母さん、世の中は捨てたもんじゃないですね。いろんなことを考えている人がいっぱいいます。素敵な夢を抱いている人がいっぱいいます。親切な人がたくさんいます。本当に世の中は、興味いっぱいのことだらけです。まだまだ旅を続けたい気持ちもありますが、なんだか僕は家に帰ってまた勉強をしたくなりました。もう一度、本を読み直してみたくなりました。分かったつもりになっていたことが如何に多かったか、知らないことが如何に多いか。また出直しです。
僕はこの旅で、歩き疲れたことも空腹に苦しんだこともありましたが、誰かが僕のことを絶えず守ってくれている、そんな安心感をずーっと感じていました。それはお母さんの愛情か、旅で出会った方々のまごころか、それとも僕の楽観的な性格なのか分かりませんが、この安心感が僕の旅の支えでした。お母さん、旅でお世話になった方々、どこかで僕をハラハラ見守ってくださっていた方、本当にどうもありがとうございました。
マルコ
各地に被害をもたらした雨も上がり、雲の切れ間から青空がのぞき始めました。マルコは船に乗り込み、甲板に出て何度か大きく息を吸って、自分の歩いてきた道を見つめました。雨に洗われたみどりがマルコの目に一段と鮮やかに映ります。やがて船は汽笛を鳴らして大海原へと滑り出すと、いつの間にか雲の切れ間から太陽の光がカーテンのように射しこんでいました。
完
-----------------------------------------------------------------
つたないエピローグで申し訳ありません。。。
6月21日より始まった、「人はなぜ繋がりを求めるのか--マルコの冒険」はおかげさまで多くの方々が書いてくださり、とても面白い物語になりました。コラムニストの方々どうもありがとうございました。また、お忙しい中、突然のコラム依頼にもかかわらず、快く?引き受けて下さった方、本当にありがとうございました。コラムニストの方々に今一度、盛大な拍手をお願いいたします。
また、多くの方々にご訪問、TBを頂きありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、次節のお題ですが、UTSコラムとしては初の試みになりますが、「無題」でいこうと思います。テーマや形式がない分かえって書きにくいかもしれませんが、その時思っていること、先のエントリーに呼応してなど、それこそ自由にエントリーして下さったらと思います。
エントリーの順番ですが、こちらで勝手ながら阿弥陀くじで決めさせてもらいました。
7月24日(月) 再出発日記
7月26日(水) そぞろ日記
7月28日(金) 逍遥録 -衒学城奇譚-
7月31日(月) とりあえず
8月 2日(水) 徒然気儘な綴方帳
8月 4日(金) T.N.君の日記
8月 7日(月) Les Chemins De La Liberte'
8月 9日(水) 愚樵空論
8月11日(金) 華氏451度
8月14日(月) ミクロネシアの小さな島・ヤップより
8月16日(水) Lovely Lovely
8月18日(金) 玄耕庵日乗
です。コラムニストの方はどうぞよろしくお願い申し上げます。
これからも多くの方にコラムを依頼しにお伺いするかと思いますが、その折はよろしくお願い申し上げます。
(文責:T.N.君の日記)