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四阿日誌#2:違う、という素敵/McRash
えー、毎度の奴でござんして、今月から12月まで、コラムの掲載が当日0時、という具合にはまいりませんで、今回のように変則的な時間に公開されますことをお許しくださいませ。秋から冬にかけまして仕事の方が繁忙期を迎えるもので(苦笑)、肉体労働者であるあたしは身体が持たなくて眠りに就いている場合がございます。

それはさておきまして、近年、頓に世の中が一つの方向だけを向かされているように思えてならないんでございます。ほんのささいな遊びの分野から、世の中の一大事を決定付けるようなことにいたるまで、異論を提示することさえ認めないような風潮が蔓延しているように感じるようになって久しいんでして、What's a not wonderful wolrdになっちまったものだと、サッチモが嘆き節になっちまうんでございます。…多分英語的に間違ってると思いますんで、今のところについては諸賢のツッコミを激しく歓迎いたします。





ところで、落語に詳しい方や、ゆうきまさみさんの漫画「究極超人あ~る」をお読みになった方は、春風亭柳昇の有名なマクラ、
えー、大きなことを言うようですが春風亭柳昇といえばいまや日本にあたし一人でして、二人いるってぇと大変なことになります

ってのを御存知なんではないかと思います。

柳昇は2003年、この世にひとりもいなくなってしまったわけですが、いずれ門下の噺家(柳昇門下の噺家も、二つ目以下は大分少なくなりまして、今春、芸術協会で真打に昇進した3名が全員柳昇門下だった、てなこともございました)が六代目柳昇を襲名するのでしょう。折しも落語の世界では昨年九代目林家正蔵、そして今年は六代目柳家小さん、というビッグネームの継承が続いていまして、歴代の正蔵も小さんも、それぞれが連綿と芸を継承(正蔵には七代目という例外がありますが)しつつも、冠絶した個性のある至芸をもって正蔵や小さんの名を高め、林家、柳家の留め名としての地位を守ってきたものです。三遊のほうでは六代目円生一門の分裂(象徴的なのは、このときに破門されて五代目小さん一門に移った川柳川柳が柳家一門にありながら円生一門の紋である三組み橘を許され、弟子にも三遊の芸を継承していること)や、円朝の名を事実上誰も(落語協会でも芸術協会でも、あるいは円楽一門でも)手にできないような諸々の事情も絡んで、ビッグネームの継承がなかなかになされない状況ですが、それはまぁ脇道ですし、女性の弟子を(今のところ)取らない柳家(立川流も、Aコースには女性が今のところいません)と同じように、それが三遊の個性、ともいえるんではないかと。

事程左様に、個性というのは如何に手を尽くしても隠しおおせないもので、様々な個性がぶつかり合い、繋がり合うからこそ世の中が動いていくんじゃないでしょうか。頑なに我を守るのも個性なら、柔軟に受け容れて自分なりに取り込んでいくのもまた個性でして、どちらがいいとか悪いとか、っていう単純な二値判断に委ねるべき性質のものじゃあござんせん。

ところが、猛烈な勢いでデジタル化、IT化の進む現代社会では、何事も二値判断に委ねようとしてしまう部分があるようでして、たとえば赤い色ひとつとっても、色素の三原色そのままの真紅もあれば、黄色みを増していけば朱色や茶色、青みを増していけば紫、という方向へとそれぞれ近づいていくわけですが、そうした差異を乱暴に、一つの基準だけで分けちまえ、てぇのが、所謂デジタル化、IT化の本質、なんじゃないでしょうか。

色を乱暴に分けちまえば白黒と赤青黄色、光の原色として緑を入れても6色しかなくなってしまいますが、美術に詳しい方なら、たとえば青系色の名前をいくつもリストすることができるでしょうし、青と赤の間には紫を中心とするグラデーション、青と黄色の間なら緑を中心とするグラデーション、つまりは無限の色彩が生まれるわけです。

で、漸く、「違う」という素敵、に繋がってくるわけです。

違いがあるからこそ、違いを認め合うからこそ、自分にない美しいものを発見することができる。あるいは自分の持つ美しいものを再発見することもできる。醜いものに気づいてしまうこともあるけれど、醜いものに気が付いたならそれを美しくする手がかりにすればいいんだと思いませんか?

相手の醜いものを罵り合うことが如何に不毛かは論ずるまでもないでしょう。つまりは天に唾するようなもんでしかないわけでして、他人を罵った言葉の刃は姿を変えて自分を刺し貫くのです。何故なら、自分だけがスペキュレイティヴな立場でいられる、ということはあり得ないのですから。

違いを認め合うことは、互いを切磋琢磨し、美しく磨き上げていく建設的な途へと繋がっていくのです。そして、新しい素敵なことを発見する手がかりになるのです。

ね、違う、って、素敵なことでしょう?

…なぁんて、あたしは考えてるわけでございます。
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by uts_home | 2006-08-30 18:39 | コラム
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