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「ふるさと」とは何だろうby「再出発日記」くま
私は大学時代の四年間を除いて、岡山県という地から離れたことは無い。そのせいか、「ふるさと」というテーマなんか書きにくい。「ふるさと」って言ってもほとんど何の愛情もわいてこない。なんとかしようとか、いう変革の情熱もわいてこない。むしろ、私のずっと気になっていたのは「日本」という「祖国」なのだ。

どういうことなのだろう。と、テーマを頂いた機会に一度考えてみた。一つ可能性としてあるのは、あまりに近くにいると愛情の自覚を持てないのではないか、ということだ。

私の郷里に薄田泣菫という明治時代の大詩人の生家がある。郷里に住んでいた時期は短いらしいのだが、「望郷の歌」という有名な美文を書いているし、「茶話」などのエッセイを読むと、あの裏山がどうしてこんなに美しい自然になるのだろう、といぶかしげに思う。

あるいは、日本労働運動の父であり、社会主義運動の先駆者としてソ連で客死した片山潜は岡山県の久米南町の生まれである。そこは冬はけっこう雪があるし、目立った景観も無いところなのだが、自伝を読むと、この地で学校にも行けずに一日働いていたのにもかかわらず、温暖な気候で住みやすく美しいところだったと書いている。彼は青年のときにこの郷里を出て、都会で苦学した後にアメリカにわたり、そして二度と郷里に帰ることはなかったのであるが、故郷をいい処としか書いていないのだ。





去年の夏、長野の無言館の巡回展が岡山に来て二回も見に行った。もうすぐ死地に赴く画学生が描き遺した絵の数々は私を圧倒した。

太田章の『風景』。遠くに見える雪山から手前の緑いっぱいの森まで、山奥の早春の風景を一挙に見せる。単純だけど心和ませる絵。木々に塗りつけた一つ一つの緑がまぶしい。

片桐彰の『梢のある風景』というものを見た。今にも泣きそうな灰色の雲を背景に、緑黒の梢が一本立っている。なんという悲しそうな梢なのだろう。

彼らが遺したのは美しい郷里の自然だけではない。佐久間修の女房のデッサンの前に暫く佇んだ。「裸婦」説明書きにはこうある。「佐久間修は愛する妻の裸体を初めて描いた。それは美しく、そして初々しいデッサンだった。この作品を遺言として佐久間はまもなく長崎県大村市でB29の直撃弾を浴びて死ぬ」若い女性が身体を捻りながら横たわっている。上を向いている。緊張した面持ちと、全てを委ねた様な眼。ふたりだけの無言の会話がなされたに違いない。このデッサンの中には「時間」が描かれている。

そこには「ふるさと」があるのだろう。ふるさとは遠くにありて思うもの。けれども、本当に美しいものなのだろう。美しいか、どうかは、けれども優れて「個人的な体験」なのであって、決して一般化は出来ない。

教育再生会議第1次報告が出た。
中に「道徳の時間の確保」というのも入っている。
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by uts_home | 2007-01-26 14:08 | コラム
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