華氏さんのエントリーを楽しみに見に行ってみると、あれれ、何を勘違いしていたのか、僕のお知らせのエントリーで担当コラムニストの日にちが、一週ずれているではありませんか。華氏さんはじめコラムを楽しみにしてくださっていた方、申し訳ありませんでした。
混乱するので、コラムのスケジュールは発表の通りとさせて頂きます。
さて、一週間もエントリーがないのは少々寂しいので、新川和江さんの詩を紹介させて頂きたく思います。
わたしを束ねないで
わたしを束ねないで
あらせいとうの花のように
白い葱のように
束ねないでください わたしは稲穂
秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色の稲穂
わたしを止めないで
標本箱の昆虫のように
高原からきた絵葉書のように
止めないでください わたしは羽撃き
こやみなく空のひろさをかいさぐっている
目には見えないつばさの音
わたしを注がないで
日常性に薄められた牛乳のように
ぬるい酒のように
注がないでください わたしは海
夜 とほうもなく満ちてくる
苦い潮 ふちのない水
わたしを名付けないで
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつらえた座に
坐りきりにさせないでください わたしは風
りんごの木と
泉のあかりを知っている風
わたしを区切らないで
,(コンマ)や.(ピリオド) いくつかの段落
そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには
こまめにけりをつけないでください わたしは終りのない文章
川と同じに
はてしなくながれていく 広がっていく 一行の詩
(文責:T.N.君の日記)