今回のテーマをもらった時には、いい機会だからきちんと勉強しよう、という気持ちだったのだが、いかんせん、生来のさぼり魔が祟って結局本質的なところはほとんどわからないままに終わりそうです。でも本は買いました。
駅前の古本屋でちょうど
「政治とカネ」という新書があったのです。
岩波新書。広瀬道貞著。当時、朝日新聞論説副主幹です。1989年10月20日発行。ちょうど、リクルート事件のあおりを受けて参議院選挙で自民党が惨敗した年であった。55年の保守合同以来、自民党が一つの院で過半数を割ったのは、これが初めてらしい。今年とよく似ていますね。リクルート事件、竹下の強引な消費税の導入、農産物の自由化が惨敗の三点セットだったらしい。
この本では、政治とカネにまつわるいろいろな問題を、まだ石川真澄などが活躍していて元気だったころの朝日論説がキチンと論じている。本当なら、それから20年間の政治とカネの問題をある程度勉強した上でこの本を論じないといけないのだろうが、そこまでの余裕がなかった。印象に残った所だけ、書き抜きして私の任をのがれたい。
このころの集票イベント活動について、朝日はこのような記事をものにしていたらしい。私の郷里のリクルートに関係したある一人の政治家(おそらく加藤六月)の選挙活動らしい。
岡山市の名園・後楽園で3500人集めて茶会を開く。/笠岡市の市民会館で婦人部後援会の2400人を集めて歌謡ショーを開催する。会費2000円を取るが、「弁当やバッグの土産を入れると一人5,000円はかかっているだろう」とほかの陣営は見積もった。
確かに昔はこのようなあからさまな「後援会活動」をよく聞いた。今はどうなのだろう。私には縁がないので、よくわからない。しかし、旗開きでこの前郵便会館に行った時に、いまはなき森幹事長が黒スーツをたくさん従え挨拶に来て帰って行ったのを見た。実際ほかの集まりでも彼を見た。冠婚葬祭パーティーに顔を出すというのは、いまでも自民党議員たちの日常活動なのに違いないと思う。この本には党内幹部のこんな声を拾っている。
「冠婚葬祭にフクロを持っていくのを全廃したらというがね、それは実態にそぐわない。いいかね、共産党引く赤旗イコール、ゼロ。公明党引く創価学会イコール、ゼロ。自民党引く個人後援会イコール、ゼロ。君たちね、残念ながらこれが政治の実態だ。じゃあ、後援会をつないでいるものは何だ。冠婚葬祭だ。都会の者にはわかんねえだろうが、村の中で葬式が出ると、みんな蔵から、ひい祖父さんの葬式の時の香典帳を引っ張り出してくる。ひい祖父さんのときに、あの家から香典が来てるかどうか。きてれば、それに少し足して持っていく。そうやって、よのなかもってるんだ。全廃なんて、できっこない。」
もおえば、これだけではないが、これが自民党の強さの秘密の一つだっのだろう。小泉になって、それがどのように構造的に変わってきつつあるのか、知りたいところだ。
政治におカネはどのくらいかかるのか、一つの目安をこの本は出している。
選挙がない時に一年生議員の収支は約一億らしい。約400の後援会を維持するためには、全体で400億円かかることになる。選挙のある年はその倍だという。彼らはどこからそれを調達するのか。一年生議員10人の資金調達の表がある。平均である。国費1880万円。党、派閥より1038万円。献金5434万円。パーティー2040万円。借入金1514万円。その他747万円。合計1億2653万円。
なぜ企業は献金をするのか。このころ
、「特に政治の恩典が一段と大きくなってきたためというより、経済活動そのものが変化し、これに従って政治とカネのかかわり方も変わってきたというべきだろう。」とこの本は言う
。「変化とは経済の政治化、情報化、国際化である」詳しく述べない。この20年間がまさにそれを証明した。グローバリゼーションの波は確かに政治が経済に及ぼす力を大幅に変えた。
その後政党助成金が導入されて、政治とカネの問題は解消するかの如くに宣伝されたが、結局変化といえば、政党のCMが増えたぐらいのもので、かえって事態は悪化しているようにも思える。そのあたりの分析はどなたかに譲り、私のところはこれまで。