煮豆燃豆萁 (豆の煮るに豆がらを燃やす)
豆在釜中泣 (豆は釜中にあって泣く)
本是同根生 (本是同根より生ず)
相煎何太急 (相炊くこといずくんぞはなはだ急なる)
中国の三国時代――魏王曹操の没後、後継者あらそいを制したのは嫡子の曹丕でした。
彼は反目していた弟曹植を捕らえ、弑虐しようとしましたが、母にいさめられ断念します。
しかし父曹操の天才を色濃く受け継いだ、曹植の詩才と人望を警戒し、難題を持ちかけて処刑しようとします。
「植よ、汝は父を葬った際、なにゆえ参列をしなかった。また予と汝は兄弟であるが、予が魏王となった今は、君臣の間柄である。おのが才をたのんで、予に礼をとらぬ。その罪は許しがたい!」
「……父の在世は文才をひけらかし、父の寵愛を得ようとしていたが、まことに汝が賦していたかどうか疑わしい」
「もし汝の詩才が本物であるなら、この場で七歩歩む間に詩をなしてみよ。もしよく成せば、死を許してつかわそう。ただし不出来ならば、その刎(くび)をはねるぞ!」
曹丕の非情な申し出に、しかし曹植は平然と、
「かしこまった。お題を頂戴いたしましょう」
と、七歩歩む間にたちまち一遍の詩を編みあげ、そのあまりのみごとさに、居並ぶ諸将衆官は思わず息をのみました。
曹丕は苛立ち、
「植!七歩では遅い!ただちに作れ!」
「かしこまりました。お題を頂戴いたしましょう」
「予と汝は兄弟だ。『兄弟』を題に作れ!ただし兄弟などという言葉を使ってはならぬ!」
「願ってもない好題!」
曹植は破顔すると、一考の間もなく誦しました。
豆の煮るに豆がらを燃やす
豆は釜中にあって泣く
本(もと)是同根より生ず
相炊くこといずくんぞはなはだ急なる
煮られる釜の中で、豆は自分を煮る豆がらに「ボクらは元々はひとつの株ではないか。どうして君がボクを煮るのだ!」と嘆きます(豆がらが燃やされている事実は、この際置いとく)。
兄弟でありながら、なにゆえ相食まねばならぬのだと、曹植は訴えかけたのです。
その詩にこめられた想いに、一同寂として声もなく、さすがの曹丕もついに曹植の命をとることはできませんでした。
ボクらはどこかで、豆を煮る豆がらになっていないだろうか?
どこかで誰かを苦しめる焔になっていろうか?
「Under the Sun」が、ココロやさしきブロガァたちの集う場であるように。
木曜日担当の「逍遥録-衒学城奇譚-」発掘屋です。
さてさて、これからどんな方向でやっていきましょうか。
今日はエラそうなコト云っちゃったんで、退却ー!!